過去の記憶とも夢ともつかないものを見ていた真生は、ふと目を覚ました。
自分に腕枕をしてくれている高坂はもう起きていて、真生を見つめていた。
「お前、今、歌ってたぞ」
と高坂が言う。
「寝たままですか?」
我ながら怖い、と思いながら真生は訊いた。
高坂は天井を見、
「あの曲を歌ってた」
と言う。
越智哲治が望んだ曲の完成は、もうそこまで来ていた。
そして、曲が完成したときが、きっと、このタイムスリップ現象の終わるときだ。
ふと高坂に訊いてみた。
「高坂さんは、なんでお医者さまにならなかったんですか?」
今なら真実を話してくれそうな気がしたからだ。


