いつか、あなたに恋をする――

 恐怖も、安堵も。

 さっきまで味わっていた感覚はすべて自分の中に残っていたが、上の階からは女生徒たちの楽しそうな笑い声が聞こえてきている。

 地図を持ってくれると言う斗真に、
「あっ、持つよっ」
と真生は言った。

 だが、
「いい」
と払われる。

 そのまま、二人でいつものように話しながら、階段を上がった。

 斗真とあの男の違いをはっきりと感じながら。

 斗真を今まで隙のない男だと思っていたが、あの時代では、婦長でさえ、もっと張り詰めた空気をまとっている。

 切迫した時代の空気のようなものを真生は、人々の表情から感じとっていた。

 よく見れば、体格も少し違うよな、と横から斗真を見上げて思う。

 喉許の辺りも、斗真の方が少し少年らしい。

 あの人の方がやはり、少し年上なのかな、と真生は思った。