いつか、あなたに恋をする――

 そんなことを思っているうちに、自分を見つめてきた男に、壁に押し付けられ、口づけられる。

 優しく慰めるように。

 だからだろうか。

 この人も、あの男と同じことをしようとしている、と思ったが、何故か逃げる気にはならなかった。

 それどころか、強く抱き締めて欲しいと願った。

 人の体温ほどのぬるさで降りしきる血も。

 力を失い自分に倒れかかってきた男の重みも。

 血を流そうと掌ですくい、身体にかけた水の冷たさも。

 死体の脚をつかんで引きずるあの重さも。

 なにもかもこの人の肌とぬくもりで吹き飛ばして欲しいと願った。

 それはきっと、自分を見つめるこの人の瞳に恋をしてしまったからだ。

 真生は自分に口づけてくる男の顔を見ながら、そういえば、名前も知らないな……とぼんやり思っていた。