いつか、あなたに恋をする――

 男の後ろの廊下の突き当たりは、やはり、焼け落ちている。

 だが、やけに生々しく、まだその匂いまでが燻(くすぶ)っている感じがあった。

 男が親指で、自分の頬を拭うような仕草をして初めて、ああ……顔は洗ってなかったな、と気がついた。

 顔は最初に飛び散った場所だったので、すぐに手の甲で、ぐいと気になる箇所を拭いていた。

 そのせいで、血は薄く肌の上で伸びていただろうから、それで気にならなかったのかもしれない。

 拭きそびれた血が、乾いてパリパリしてきたら、違和感を覚えていたのだろうが。

 まだそこまでの時間は経っていなかった。

 男は真生の両肩をつかむと、少し前のめりになって、真生の視界の高さまで視線を下げてくる。

「真生。

 ……なにがあった?」

 この人、なんで私の名前を知ってるんだろうな。

 やっぱり、実は斗真だとか? と思いながら、黙っていると、男はいきなり真生を抱き締めて来た。