いつか、あなたに恋をする――

「偽物よ、それ。
 私も天然痘のワクチンは打ってないから。

 うちの親とかは打ってるみたいなんだけど」

「え……」

「でも、本物も持ってるわ。
 もっと危険なウイルスも。

 だから、二度と、高坂にもこの病院にも近寄らないで」

「わかったわよ」
と女は立ち上がり、濡れていないお金だけを拾っていこうとする。

 腕を組んだ真生は足許を見下ろし、

「まだ残ってるわよ」
と言ったが、女は、

「いらないわよ、そんなもの」
と言って出て行こうとした。

 が、開いた扉の先で誰かを見、一瞬、立ち止まりかける。

 だが、警戒した表情のまま、行ってしまった。

「ただの水なのに」

 そう呟いて、真生は濡れたお金を拾う。

「お前にあんなことを言われたら、薄気味悪くて拾えないだろう」

 真に迫り過ぎだ、と八咫は言った。