いつか、あなたに恋をする――

 真生は誰にも見つからないよう、いつからあそこに居たのだろう、微かにハイビスカスの香りが移っている女を廃病院の空き部屋へと連れていった。

「あなたはどこの人間なの?」

 そう問うと、女は細く勢いよく煙を吐き出したあとで、言う。

「私はどこの人間でもないわ。

 ちょっと軍部に雇われてただけよ。

 高坂の真意を探るために」

 女の赤いハイヒールの周りに金は散乱したままだ。

「高坂さんの愛人は、みな、殺されたり行方不明になっているようだけど。

 始めから、殺されるような立場の人だったのよね。

 その愛人たちは、恐らく、軍との連絡の橋渡し役」

「……高坂は何故、生きてるの? 私が殺したはずなのに」

 この女だったのか、と真生は思った。

 いつか、この先、いや、彼女や高坂にとっては、過去の出来事だが。

 この女に『高坂』は殺される。