円タクだ、と病院の前から乗り込みながら真生は思った。
黒くどっしりとして、それでいて愛嬌を感じさせるこの一円タクシーには一度乗ったことがある。
いや、博物館でだが。
運賃が定まっておらず、敬遠されていたタクシーに手軽に乗れるようにするため、当時の東京市内を一円均一で走る一円タクシーが出来たという。
まあ、一円の価値が今とは随分と違うが。
一円紙幣とかあるもんな。
竹内宿禰って誰だ、高坂がくれたお金にある肖像画を見て思う。
そのあと、窓から煉瓦作りの街並を見ているうちに、車は日本橋の三越にたどり着いた。
円タクを降りながら、その建物を見上げ、真生は言う。
「今でもありますよ、三越。
このままの姿で、ほとんど変わりないです」
現代まで残るルネサンス洋式の建物は、今はまだ真新しく、圧巻だ。
凄いな、三越。
エスカレーターにエレベーターまであるし。


