だが、ここで現実逃避するような余裕はなかった。

 男の視線が、転がされたせいで、めくれたスカートから覗く真生の白い腿を見ていたからだ。

「高坂の愛人だけのことはある。いい女だな」

 タダで返さなくていいか。

 そう男は呟き、真生の脚をその厳(いか)つい手で撫でてきた。

 そのぞわりと来る感触に、やはり、これは夢ではないのかと怯える。

「泣きわめかないのか。さすがだな」
と男は言った。

「どうせ誰かに雇われて高坂といるだけなんだろ?

 悪いようにはしない。

 黙ってじっとしてろ」

 そう言いながら、男が自分の上に乗ってきた。

 胸にのしかかる男の重さと、恐ろしさで身動きできなくなりそうだったが。

 このままじっとしていては、更に恐ろしいことが起こるだけだ。

 真生がベッドの上を手探りで探しはじめたとき、視界の隅に、それが入った。