また或る日、礼拝堂の外で、真生が弾くのを聴いていた。
微妙に間違うな、と笑ったとき、目の前に真生が居た。
「あら、なにしてるの、斗真」
と彼女は言った。
真生は、何気なく、そう言ったあとで、いま、自分が言った言葉を反芻し、驚いているようだった。
「斗真、斗真よね」
確かめるように、名を呼び、腕をつかんでくる。
そういえば、あの曲がもう聴こえないな、と思ったそのとき、
「透」
と男の声がした。
まずい、と言った真生がいきなり腕をつかみ、軽く背伸びして、口づけるフリをしてきた。
なにが起こったのかわからないまま、微妙に触れない真生の唇の気配だけを感じながら、目を閉じる。
「……また、女か。あとで院長室に来いよ」
そう言って、その声は消えた。


