「そういえば、この礼拝堂ってさ」
と百合子は声を落とし、言ってきた。

 そのおしゃべり好きな様子は現代の女子高生たちと変わらない。

「昔、前院長がここにこもって、死者を蘇らせる研究をしていた場所って言われてるのよ」

「高坂さんのお父様がですか?」

「そう。
 だから立ち入り禁止なんですって」

「へー」
と相槌を打ちながら、その話、結構知られてるんだな、と思っていた。

 頭の中に、図書室のような場所で、黙々となにかを書き写していた白衣の男の後ろ姿が浮かぶ。

 子を思う親の気持ちが蘇りという奇跡をなしえた。

 では、高坂さんを救うはずの私は――?

 自分をもう一度蘇らせることはできないと高坂さんは言っていた。

 でも、昭子さんは、確かに蘇りの瞬間を見たという……。