八咫と別れたあと、真生は礼拝堂の鍵を開けてみた。

 現代の職員室で借りてきた鍵だが、鍵穴は、ずっと変わっていなかったようで、やはり開いた。

 ここからなら、もしかして、飛べるかもしれない、と思って来てみたのだ。

 自分たちの時代のことが気にならないわけではない。

 創立記念祭まで時間もないことだし。

 だが、現代には戻れなかった。

 少しほっとする。

 次もここへ、この時間へ飛べるかはわからないからだ。

 礼拝堂に鍵をかけていると、
「あっ、あんた、やっぱり鍵持ってたのね」
という声がした。

 振り向くと、百合子が立っていた。

 見せてよ、とそれを奪った百合子は、

「新しいじゃないの、この鍵。
 さては、高坂さんに新しく作ってもらったのね。

 さすがは愛人様ね」
と言い出す。

「もう~、返してくださいよ。
 私が怒られますからー」
とそれを取り返そうとしたが、返してくれない。