「私は軍人になり、上の命ずるがまま、多くの命を闇に葬った。

 最初の一人を忘れられなかったからだ。

 たくさん殺せばそいつは雑魚の一人になる。

 そう思っていた――。

 だけどな、真生。
 いつまでも覚えているんだよ。

 他は忘れても、最初の一人は忘れられない」

 今でも夢に見る、と八咫は目を閉じた。

「たくさん殺せば、か」
と呟いた真生に、八咫は、

「一人で済むのなら一人でいい。
 お前はそれ以上なにも考えなければいいんだ。

 せわしない日常に、罪の重さもきっと少しは薄れていく」

 そんな慰めにも似た言葉をかけてくれた。