「真生」
 高坂と別れたあと、八咫が追いかけてきた。

 病院の廊下の途中で呼び止められる。

「真生。お前、誰か殺したい奴が居るのか」

 俺が殺してやろうか、と言ってくる。

「いえ、結構ですよ」
と真生は苦笑した。

 あなたにはもう、その人はもう殺せないし。

 それに……たぶん、あなたは、本当は人を殺しても平気な人ではないから、と真生は思っていた。

「ねえ、八咫さん。
 八咫さんにとって、人を殺すってどういうことですか?」

「やらねばならないことだな。

 それなくしては、もう俺は存在出来ない。

 人を殺して、始末して、ご飯を食べて、寝て。

 ずっとこういう暮らしが続いていくんだろうよ」