自分の上に居る死んだ男をベッドに転がしたときには、前から居る男の魂の方は、既にこちらには興味を失ったかのように、また、廊下を這いに行っていた。

 わからないな、霊の考えることは。

 この場所のせいか、まるで現実感のないまま、真生はそう思い、脱ぎ散らかしたかのように散らばっている服をかき集める。

 すぐに着ようとしてやめた。

 男の血が全身についていたからだ。

 幸い水は出るようだったので、ひとつだけ病室にあった水道で、見えるところについた血を拭いて、制服を着たが、鏡がなかったので、顔や頭についた血を拭うのは忘れていた。

 ここがどこだか知らないが、男の死体を始末しなければ、と真生は思っていた。

 状況は理解できないままでも、人はおのれの罪を隠そうとする。

 あの男の霊がいつも這っている、いや、今も這っている廊下で、真生は死体を引きずっった。

 ああ……七不思議のひとつ。

 死体を引きずる女は自分だったのか、と思いながら。