殺しかけた院長の魂に蘇られたら、逆襲されるかもしれないし、余計なことをしゃべられてしまうかもしれませんからね。

 ですが、そもそも院長は殴られて意識を失っていただけで、死んではいなかったんです」

「見てきたように言うな」
と八咫が言った。

 見てきたんですよ、と言ったとき、高坂が訊いてきた。

「お前が見たのは儀式のところからなんだろう?

 何故、院長が死んでなかったとわかる?」

「昭子さんのやり方では、儀式が成功することはないからです。

 高坂さん、あなたのお父様は命をかけて、あなたを蘇らせた。

 儀式に必要なのは、おのれの血です。

 それも大量の。

 でも、昭子さんはおそらく、病院経由で得た他人の輸血用の血液を使って、儀式を行った。

 命をかけなかった彼女に儀式が成功出来たとは思えません。

 だから、院長は儀式により、蘇ったのではない。

 ただ、死んでなかっただけなんですよ」