相変わらずカーキ色の軍服を着ている彼に、そういえば、この人、他の服着てるの見たことないな、と真生は思っていた。

 まるで、軍人ではない自分は存在しないとでもいうかのように――。

「それで、結局、あの院長は誰なんだ?」
 真生たちの話を聞いていたらしい八咫がそう訊いてくる。

「あれは院長本人です」
と真生は言った。

「でも恐らく、院長は津田秋彦のフリをしています」

「昭子にまた撲殺されないようにか?」
と高坂が言う。

「違います。
 まあ、殺しかけたのは昭子さんでしょうし。

 彼女が怖いから、というのもあるかもしれませんが。

 ともかく、院長本人であるというのは間違いないです」

 そう真生は言った。