「言うな。
 俺も怖くないわけじゃない。

 真生、未来はすでに確定している。

 お前が今、なにを教えても、俺は、その日に死ぬんだ。

 なにを聞いても無駄だと言うことだ」

 真生は黙り込む。

 真生……、そう呼びかけ、高坂は真生を抱き締めてきた。

 死から蘇った高坂の体温は確かにあって。

 今、そこに生きているのだと感じるのに。

 でも死ぬんだな、この人、と真生は思った。

 万が一、未来を変えて、そこで助かったとしても、自分たちの時代には、この人はもう生きてはいない――。

「で、そこら辺で、そろそろいいか?」

 後ろからいきなりした声に、高坂は振り返り、八咫、とその名を呼んだ。

「いや、ちょっと邪魔してみた」
と八咫は、いつものしれっとした口調で言ってくる。