「どうかしたのか?」
いきなり、背後から高坂に声をかけられ、びくりとする。
今、まったく人の気配がしなかったな、と思いながら、真生は高坂に無言でノートを手渡した。
軽く見た高坂は、
「なるほど」
と返してくる。
「これは誰のだ?」
「……私のものだそうです。昭子さんが言うには」
「だが、それは父の字だ」
と高坂は言った。
「そうですね。
私もあなたのお父様が必死にそれを書いてらっしゃるところを見ました。
でも、私は高坂さんのお父様から、それを受け取った覚えはありません。
今、昭子さんから受け取ったんです。
そして、私はいつかこれを使ってあなたを蘇らせるらしいです。
その儀式のとき、昭子さんは私からそれを掠めとった。
……だとするなら、このノートは一体、どこから来たんでしょう」
高坂はそのノートに軽く手をかけ言ってきた。
「このノートがどこから来て、どこへ行こうとしているのか知らないが。
少なくとも、お前が俺を蘇らせることはできないのは確かだ」
えっ、と真生は高坂を見上げた。