真生がドアを開けた瞬間、あの兵士と同じ、ぷんと鼻を突く黴臭いような匂いがした。
やはり、締め切っているからかな、と思ったのだが、何処からか風を感じた。
地下室の淀んだ空気ではない。
澄んだ心地よい、夜の風のような。
だが、そこには違う匂いが混ざっていた。
よく嗅ぐ匂いだ。
「……血の匂い」
生々しい感じではなく、長く染み付いているような血の匂いだ。
真生が立っていたのは、見覚えのない古い廊下だった。
木造の校舎のようにも見える建物だが、何故か行き止まりが焼け落ちている。
その長い廊下の両脇の部屋の扉はあったりなかったりして、半ば廃墟のような感じだった。