月明かりで確認したそれは、血のようだった。

 もう片方の手にあるのはノートのようで。

 それを見ながら、その人物は床に複雑な図形を描いていた。

 ビーカーが空になると、倒れている男の側に行き、幾つか並んだ大きなガラス瓶のようなものから血をくんでいる。

 その血はどこから? と思いながら見ていると、やがて、いびつな形ではあるが、魔法陣が完成した。

 ビーカーを置くと、その人は薄い手袋のようなものを外す。

 手が汚れないようにやっていたらしい。

 新しい手袋をつけかえると、倒れている男の足を掴み、魔法陣の中心に引きずり込んでいた。

 なめくじの這ったような跡が、歪んだ更に図形を崩す。

 荒い息を吐きながら、真ん中に置かれた人物の胸に、はらりとなにかを置いていた。

 茶色がかった人の髪のようだ。