そのとき、坂部が、
「先生、すみません」
と礼拝堂の入り口に立つ教師に呼ばれた。

「そのまま弾いてろ」
と言って出ていってしまう。

 真生は楽譜の通りに弾くか迷い、そのまま進む。

 弾き終わっても、坂部はまだ戻ってこなかった。

 真生は立ち上がり、あの礼拝堂の図書室のところに行く。

 ドアを開けてみた。

 次の瞬間、真生は暗がりに隠れるように立っていた。

 そこはあの、自分が襲われた病室だったので、長居はしたくなかったのだが、今、出るわけにはいかなかった。

 廊下に死んだように男が横たわっていたからだ。

 その側、突き当たりの壁近くで、誰かがビーカーを手に、なにかを少しずつ垂らしながら移動していた。