「お前も個人的に俺の顔が好みだろう」

 こちらを向いてそう言ってきた高坂にどきりとしながらも、

「最初のときにあなたに見惚れたのは、幼なじみとそっくりだったからで」
と言い訳をしようとした。

 だが、
「じゃあ、お前はその幼なじみに見惚れるのか?」
と言われ、

「見惚れないですよ、いつも見てる顔なのに」
とうっかり言ってしまう。

 しまった。
 見惚れたじゃなくて、驚いた、と言えばよかった、と思いながら、

「ちょっと夫人の様子を見てきますね」
と真生は足早に歩き出す。

「分(ぶ)が悪くなって逃げたな」
という高坂の声が追いかけてきた。

 ほんとうにどこまでも人を追い詰めようとする人だ。

 殺されかけて当然だな、と思っていた。