「おぞましいものを、か」

 解散したあと、廊下を歩きながら真生は呟く。

「気になるのか」
と院長の近くに居たので、その呟きを聞いていたらしい八咫が訊いてきた。

「なにがおぞましかったんでしょうね?

 確かに額に少し縫い合わせた傷はありましたけど、おぞましいって程ではなかったですよね」

「やはり、中身は秋彦で、院長の顔がおぞましいってことじゃないのか?」
と高坂が適当なことを言ってくる。

「院長の顔、別におぞましくないじゃないですか。

 かなりの男前ですよね。
 ちょっと濃いですが。

 昭子夫人は院長のなにが気に入らなかったんでしょうね」
と言うと、

「顔の問題じゃないってことじゃないのか?」
と高坂は言うが。