「まあ、そんな怪しい話はいい」
と八咫は切り捨てるように言ったあとで、

「院長のことだが、そろそろ包帯を外させてもいいんじゃないか?

 松村とかいう医師にも確認しろ。
 あれが秋彦なら、夫人も失脚させられる」
と言う。

 夫人がこの病院に残っていたら、高坂を理事長に仕立て上げたところで、思うようにならないだろうと思っているようだった。

「これ以上、疑心暗鬼な状態を長引かせるなと上からも言われている」

 了解、と言いながら、高坂は真生の手から本を取り、棚に戻した。