八咫は、じゃ、遠慮なく、と上に乗っている机等を退け、絨毯で死体を丸めて担いだ。

 露(あらわ)になった木の床に、光の加減により、黒いシミのようなものが見える。

 なにかが板の深い部分に沈殿しているような黒ずんだ痕。

 図形のようだ。

「……魔方陣」
と真生は呟く。

 八咫が覗き込み、
「こりゃあ、反魂の術が使える病院だと言われても仕方ないな」
と笑う。

「木だからからかな。
 染み込んだ血の痕が消えないんだよ」

 そう高坂は真生に言ったように説明していたが、消えないのはそのせいではないようなした。

 この魔法陣。

 血で描かれているのか。

 かなりの量の血のようだ、とその複雑な図形を見ながら真生は思う。

 これだけの量の血をひとりの人間が流したとすると……。

 命を賭けるというのはそういう意味か、と気がついた。