「そうだ。
 父親がサンプルとして残していたという噂があるからな。

 だが、その在(あ)りかは俺も知らない。

 だから、軍はこの病院に、というか、廃病院に俺を住まわせ、探させてるんだ。

 あの病原体は、感染力が低く、致死率が高い。

 いろいろ使い道があるだろうよ。

 万が一……」
と言いかけた高坂の言葉を真生がつないだ。

「万が一、広まってしまっても、高坂さんという治癒した人間がいる。

 ならば、病気に対する抗体を持つ高坂さんの血液が治療に使えるかもしれないですよね。

 100%効く保証はないし、治療できる人数は限られるでしょうが」

「だが、まあ、軍の上層部くらいの人数なら大丈夫なんじゃないか?」
と高坂は軽く言う。

「だが、俺がその怪しい蘇りの秘術で蘇っただけの人間なら。

 この日本に抗体のある血液を持つ人間はいない、ということになるわけだが」

 高坂に抗体があるのかないのか。

 そして、この病院にその病原体があるのかないのかで、軍の、高坂と病院に対する態度も変わってしまうことだろう。