「……高坂さんは、子供の頃、致死率の高い病原体に侵されて、死にかけたんですよね?」

 一体、どんな、と言いかけると、高坂は顔を上げ、
「その話は今はタブーになっているが、どうしても聞きたければ、婦長にでも訊け」
と言ってきた。

「え? 婦長?」

「そのとき立ち会った看護婦は、今の婦長と当時婦長だった、うちの母親なんだ」

 高坂の母も今はもういないようだった。

「婦長が話してくれるかはわからないがな」
と言う。

 ……そういえば、病原体は何処だとあの男は言っていた、と思い出しながら、真生は訊いた。

「わかりました。

 軍が探しているのは、怪しげな蘇りの秘術などではなく。

 その海外から持ち込まれたという病原体なんですね?」