「ものすごい普通に置いてありましたね……」

 古い医学書などと並んで、ぽんと目に付く場所に置いてあった。

「みんな鍵のついてる場所とかばかり探すからな」
と高坂は言う。

「読めるか?」

 そっとめくって見ている真生に高坂が訊いてきた。

「読めるわけないじゃないですか」
と真生が言うと、

「そうだろうな」
と言う。

「数種類の古い言語を織り交ぜて書いてある。

 簡単には読めないように。

 ……だが、父はそれを解読したようだ。

 最初の方だけ読んで、あまりに荒唐無稽な話なので、小莫迦にして放っていたらしいのに。

 俺が死にかけたせいで、必死に解読したようだ。

 医者が魔術に頼ってどうすると思うんだがな」
と高坂は苦笑していたが、真生は言う。

「医学が魔術に負けたんじゃないですよ。
 親の思いが病(やまい)に勝っただけの話です」