「どうしたんですか? この傷」
 そう真生が訊くと、高坂は包帯に覆われた手首をちらと見せて言う。

「ああ、痕になるかもな。
 さっき八咫が殺した奴に斬りつけられたんだ」

「……いろいろですね」
と言いながら、真生は視線を落とした。

 『あのとき』の高坂さんには傷はなかった。

 では、あれはやはり過去の高坂さんだったのか。

 すごい未来ってことはないしな、と図書室で読んだ学校年鑑を思い出していた。

 高坂はそう遠くない未来に死んでいる――。

「そういえば、あなたの疑いは晴れましたか?」

「疑い?」
「院長撲殺事件ですよ」

「院長は生きてるだろうが」
とお前の方がひどいぞ、と言う。