この学園には、ここが病院だったときからあるという古いパイプオルガンがあるのだが。

 創立記念祭で、久しぶりに修理したとかいうパイプオルガンの裏に貼り付けてあった楽譜が発見されたのだ。

 それを真生が弾くことになっているのだが、なかなかに難しく。

 というか、パイプオルガンを弾くこと自体がまず難しく、もう本番も近づいているのに、一度も通しで成功したことがない。

 恐ろしい話だ……。

 そんなことを考えていたとき、

『真生――』

と誰かが自分を呼んだ気がした。

「斗真?」
と真生は振り返る。