「高坂さんの愛人さんは、何人も死んでるみたいですから。

 あなたがそんなことになったら、ご両親に対して悪いと思ってるんじゃないですかね?」

 百合子はなにか考える風な顔をしたが、すぐに、ふん、と鼻で笑って見せる。

「うまくまとめたわね。

 ……高坂さんの愛人らしき女の人、何人か見たことあるわ。

 みんな派手な美人だったけど、確かに、どっか胡散臭かったわね。

 まあ、せいぜいあんたも死なないようにすることね」

 スカートをはたいて、立ち上がった百合子は、デスクに居た高坂に気づき、きゃっ、と可愛らしい声を上げる。

 それを見ながら、真生は、そんな可愛らしい素振りを見せても、かなり後の祭りな感じがするんだが、と思っていた。

 っていうか、高坂さんの部屋なんだからいて当たり前だろうに。

 私がまるで高坂さんがいないかのように愛人さんの話などしていたから、居ないと思っちゃったのかなあ、と思いながら、

「ご忠告、ありがとうございますー」
と言って、真生は百合子を見送った。