「いえ、何故、私がこんなに過去と未来を行ったり来たりするのかなと考えていたんですよ」
と言うと、

「心当たりはないのか」
と言いながら、高坂は起き上がらないまま、こちらを向く。

 心当たりならある――。

 そう思いながら、真生は窓の方を見た。

 部屋の前にある小さな池に反射しているのか、薄いカーテンの向こうから差し込む月の光が天井で揺れている。

 なにも話さず、黙っている真生に、高坂が訊いてきた。

「一緒に寝るか?」
と。

 いえ、と真生は言う。

「私の時間軸では、まだ寝る時間じゃないので。
 お茶でも飲んでていいですか」

 そうか、と言って、高坂は目を閉じる。

「お前の好きな紅茶は鍵のついた棚にある」

「……それは鍵を探さないと飲めないという話ですか」

 たまに夏海たちとやる脱出ゲームを思い出し、そう呟くと、阿呆か、と言われた。