後ろはさっきと変わらない図書室に見えたが、いつの時代でも、ここはこんな感じなのだろう。

 ここは過去のはずだ。

 だって、外は夜で、あの愛人二号さんが立っている。

 大きくくるんとした瞳でこちらを見、
「なにしてるの。
 礼拝堂は立ち入り禁止よ」
と言ってくる。

「ねえ、あなた、ちょっと調子に乗ってるんじゃないの?」
と愛人二号に罵られながら、外に出た。

 リアルに感じられる土と草の匂いを含んだ空気を肺に入れる。

「高坂さんがあんたに優しくしてくれてるのは、あんたみたいなのが物珍しいからよ」

 そうでしょうねえ、と言いながら、真生は明かりが少ないせいで、明るい月を見上げた。

 美しい夜空だ。

 現代では見られない、こういうものを見られただけで、時間を飛んだ甲斐もあるような気がしてくる。

「あの――」

 愛人さん、と言いかけ、真生は踏みとどまった。

 さすがに本人に向かって言うのは失礼かな、と思ったからだ。