放課後、真生はパイプオルガンの練習に礼拝堂に来ていた。

 この礼拝堂は高坂の時代にはまだ新しく、病院の横にある。

 コンクリートもわずか何十年で、こんなになっちゃうんだな、と感慨深く思っていると、

「なあ、如月」
と真生の横で練習を見張っている坂部が心配そうに呼びかけてくる。

「ちゃんと練習、やってるか?

 創立記念祭は来週だぞ。

 お前、上手くなったり、下手になったり。

 一度出来たところが出来なくなったりするからな」
と言われ、すみません、と真生は苦笑いした。

 そのとき、斗真が礼拝堂の入り口に覗いた。

 他の生徒だったら、おい、勝手に入るなよ、と言う坂部が、

「斗真っ。
 今、暇か?

 如月が練習するか、お前、見張っててくれよ」
と自身は用があるらしく、真生の監視を斗真に押し付ける。