昼下がりの図書室。
大きな本を抱えた真生は、窓際の棚に腰を預け、ページをめくっていた。
揺れるカーテンがときおり、頬をくすぐる。
心地よい風が吹いていた。
あの日、図書室でうとうとしていたときのようないい風だ、と思っていると、
「ねえねえ、今朝、川原でさ。
首を斬られた全裸の男の遺体が見つかったらしいよ」
という話し声がその風に乗って聞こえてきた。
なんで全裸? とそこが気になるらしい女生徒たちが笑っている。
いや、そこ、笑うとこか、と思ったが、まあ、普通の女子高生にとって、死体も殺人事件も遠い存在だ。
決して、廊下にゴロゴロ転がってたり、捨てるところがないからと持ってこられたりするものではない。
そんなことを考えながら、本から顔を上げると、斗真がこちらを見ていた。
「昼休みは練習しないのか」
「昼休みに礼拝堂を開けると、他の生徒たちも入るかもしれないから駄目だって。あのパイプオルガン、結構貴重なものらしいからね」
そう言いながら、またページをめくると、斗真は、ふうんと言い、そのあとは黙っていた。