「おはよう、真生」
「おはよう」

 こうしていると、なにもかも夢だった気がするな。

 夏海と川沿いの道を歩きながら、眩しい日差しの中で、真生はぼんやり、そんなことを考えてた。

 ずっとこのままでいたら、あの世界のことは、なにもかも忘れられるのだろうか――。

 そう思ったとき、
「あら、おはよう。弓削(ゆげ)くん」
と夏海が振り返り言う。

 相変わらず、不用意に話しかけてきたら斬り殺す、という顔つきの斗真が、おはよう、と返していた。

 やはり、高坂さんとよく似ている、と思いはしたが。

 不思議に、同じ顔にいきなり現れられても、どきりともしない。

 三人で創立記念祭の話などしながら歩いていると、少し先にパトカーがたくさんとまっていた。

 川原には警官と刑事らしき人々。

 そして、青いビニールシートを持った鑑識の人たちがいた。

「なにか事件でもあったのかしらね」
と夏海は興味津々覗いている。

 真生も斗真とともに、チラと川原を見下ろした。