朝、目を覚ました真生は、息を吸い、覚悟を決めて、高坂が寝ている居間のドアを開けた。

「おはようございます」
と言ったが、そこは自分の部屋だった。

 思わず振り返ると、後ろには自宅の廊下があった。

 ……今飛ばなくてもな、と思う。

 独り言を言ったみたいになってしまったではないか。

 とりあえず、行こうとしていたトイレに行く。

 明るくて綺麗な洋式のトイレだ。

 あの時代も悪くない、と思っていたが、トイレに関しては、もちろん今の方がいい。

 まあ、便器の中から霊が出ることは、こっちの世界でも、まれにあるが。

 こっちも朝か、と真生は廊下の窓から外を見た。

 なんとなくあの曲を口ずさみながら、ドアを開けてみたが、やはり、飛ばなかった。