そのとき、誰かが部屋に入ってきた。

 真生は息を止め、

 高坂さんだったら殴ろう、と身構えていた。

 だが、

 でも、そういえば、ここ、高坂さんの寝室だよな。

 パジャマとか、忘れ物があったのかも、と気づく。

 とりあえず、寝たフリをすることにした。

 すると、高坂はベッドの側で足を止めた。

 真生を見下ろしているようだ。

 その気配を間近に感じ、真生は緊張して唾も呑み込めなくなる。

 なっ、なんで動かないんですかっ。

 なんで動かないんですかっ。

 早く行ってくださいーっと心の中で絶叫する真生の顔の側に高坂は手をつく。

 ふわりと鼻先で高坂のいい匂いがした。

 高坂は身を屈め、真生の顔を覗いているようだった。