「真司や。『がしゃ髑髏』は知っているかえ?」
「え? がしゃ髑髏、ですか? ……たしか、死んだ人たちの怨念が集まって、巨大な骨の形になった妖怪ですね?」
菖蒲は真司の答えに感心を持つと深く頷いた。
「ほぉ。よく知っているのぉ」
――あれ……? 本当だ。僕、なんでこんなこと知っているんだろう?
妖怪のことなんて本で見たことがあるぐらいで調べたことも勉強したこともないのに、不思議とがしゃ髑髏について頭に浮かんだ。もしかしたらネットなどの情報で知ったのかもしれないと、そのとき真司は深く考えなかった。
菖蒲は前を向き、歩きながらも話を続ける。
「ま、ザッと言えばそうやの。戦死した者や野垂れ死にした者など、埋葬されなかった骸や骨の怨念が塊となり人間に恐れられる妖怪――あやかしになったのががしゃ髑髏なのじゃ。そのがしゃ髑髏は、人間を見つけると人々を襲い喰らっていた……が、さて、ここで問題じゃ。そのがしゃ髑髏は今、なにをしていると思う?」
「え!?」
唐突な質問に真司は困惑する。
――昔は人を食べていたんだよね。今は食べないってことは……改心してるってことだよね? 改心ってことは、優しくなっているってことだから……。
「うーん」と、真司は歩きながら考える。しかし、いくら考えても答えは見つからなかった。
「ぶぶー、時間切れじゃ。答えはのぉ……今は、本屋の店主じゃ」
「ほ、本屋ですか!?」
思いもよらなかった答えに真司は驚きを隠せなかった。おそらく、誰もが想像できないだろう。
「図書館と言っても過言ではないの。貸し出しもやっておるしのぉ。そして、なにより広い!! 昔は人間を喰らっていたがしゃ髑髏も、今じゃ、この商店街の仲間で、唯一の本屋の店主じゃ」
「人を食べていた妖怪が本屋さん……」
「うむ。驚くのも無理はない。おぉ、そうじゃ。今度、連れてってやろうぞ」
「えぇっ!? い、いや、僕はいいです!!」
今は違うとはいっても、かつて人を食べていたことには変わりはない。今の真司には、まだそんな妖怪に会う勇気はなかった。
手を振りながら断わっている真司を見て、菖蒲は袖口を口元に当てクスクスと笑う。菖蒲がおかしそうに笑う姿を見て、真司は恐れながらも、その妖怪の今の姿に少しだけ興味を抱いたのだった。
「え? がしゃ髑髏、ですか? ……たしか、死んだ人たちの怨念が集まって、巨大な骨の形になった妖怪ですね?」
菖蒲は真司の答えに感心を持つと深く頷いた。
「ほぉ。よく知っているのぉ」
――あれ……? 本当だ。僕、なんでこんなこと知っているんだろう?
妖怪のことなんて本で見たことがあるぐらいで調べたことも勉強したこともないのに、不思議とがしゃ髑髏について頭に浮かんだ。もしかしたらネットなどの情報で知ったのかもしれないと、そのとき真司は深く考えなかった。
菖蒲は前を向き、歩きながらも話を続ける。
「ま、ザッと言えばそうやの。戦死した者や野垂れ死にした者など、埋葬されなかった骸や骨の怨念が塊となり人間に恐れられる妖怪――あやかしになったのががしゃ髑髏なのじゃ。そのがしゃ髑髏は、人間を見つけると人々を襲い喰らっていた……が、さて、ここで問題じゃ。そのがしゃ髑髏は今、なにをしていると思う?」
「え!?」
唐突な質問に真司は困惑する。
――昔は人を食べていたんだよね。今は食べないってことは……改心してるってことだよね? 改心ってことは、優しくなっているってことだから……。
「うーん」と、真司は歩きながら考える。しかし、いくら考えても答えは見つからなかった。
「ぶぶー、時間切れじゃ。答えはのぉ……今は、本屋の店主じゃ」
「ほ、本屋ですか!?」
思いもよらなかった答えに真司は驚きを隠せなかった。おそらく、誰もが想像できないだろう。
「図書館と言っても過言ではないの。貸し出しもやっておるしのぉ。そして、なにより広い!! 昔は人間を喰らっていたがしゃ髑髏も、今じゃ、この商店街の仲間で、唯一の本屋の店主じゃ」
「人を食べていた妖怪が本屋さん……」
「うむ。驚くのも無理はない。おぉ、そうじゃ。今度、連れてってやろうぞ」
「えぇっ!? い、いや、僕はいいです!!」
今は違うとはいっても、かつて人を食べていたことには変わりはない。今の真司には、まだそんな妖怪に会う勇気はなかった。
手を振りながら断わっている真司を見て、菖蒲は袖口を口元に当てクスクスと笑う。菖蒲がおかしそうに笑う姿を見て、真司は恐れながらも、その妖怪の今の姿に少しだけ興味を抱いたのだった。