* * *
翌日、真司は放課後になると、さっそくあかしや橋へと走って向かっていた。
人ならざるモノとはもう関わりたくないと思っていたが、菖蒲と出会い、妖怪から初めてお礼を言われて、その気持ちが少し変わったのだ。まだ過去のことを思い出すと心が苦しくなるが、真司は信じている。
菖蒲が昨日言った『今よりもよい方向へと変わる』ということばを。
「はぁ、はぁ……」
堺市は山の表面を削りコンクリートを埋めた場所が多く、見た目が平坦でも実は坂だったという道がとても多い街だ。だから、山道に慣れていない人は、すぐに息があがってしまう。
それ真司も同じだった。真司は、少しでも楽になるように学ランの首元のボタンを開け、深呼吸をしながら息を整える。
目の前には、あかしや橋がある。菖蒲がくれたブレスレットに一瞬だけ目をやると、真司は再び前を向き、あかしや橋へと一歩大きく踏み出した。
その瞬間、ブレスレットが淡く光り出す。
すると、あかしや橋と書かれているプレートの文字がゆらりと揺れ、文字があ〝や〟かし橋へと変わった。後ろを振り返ると、来た道は霧に覆われ見えなくなっていた。
目の前に朱色の大きな鳥居が現れる。周りの景色は霧で見えないのに、橋の名前が記されたプレートに橋、そして、鳥居だけははっきりと見えていた。
――妖怪の町『あやかし商店街』。
この先に進む人はいない。けれど、初めてここに来たときよりも怖さは感じなかった。
真司の心は少しだけ軽い。だからなのか、鳥居の中へと向かう足取りは軽く、自然と笑みが浮かんでいた。
翌日、真司は放課後になると、さっそくあかしや橋へと走って向かっていた。
人ならざるモノとはもう関わりたくないと思っていたが、菖蒲と出会い、妖怪から初めてお礼を言われて、その気持ちが少し変わったのだ。まだ過去のことを思い出すと心が苦しくなるが、真司は信じている。
菖蒲が昨日言った『今よりもよい方向へと変わる』ということばを。
「はぁ、はぁ……」
堺市は山の表面を削りコンクリートを埋めた場所が多く、見た目が平坦でも実は坂だったという道がとても多い街だ。だから、山道に慣れていない人は、すぐに息があがってしまう。
それ真司も同じだった。真司は、少しでも楽になるように学ランの首元のボタンを開け、深呼吸をしながら息を整える。
目の前には、あかしや橋がある。菖蒲がくれたブレスレットに一瞬だけ目をやると、真司は再び前を向き、あかしや橋へと一歩大きく踏み出した。
その瞬間、ブレスレットが淡く光り出す。
すると、あかしや橋と書かれているプレートの文字がゆらりと揺れ、文字があ〝や〟かし橋へと変わった。後ろを振り返ると、来た道は霧に覆われ見えなくなっていた。
目の前に朱色の大きな鳥居が現れる。周りの景色は霧で見えないのに、橋の名前が記されたプレートに橋、そして、鳥居だけははっきりと見えていた。
――妖怪の町『あやかし商店街』。
この先に進む人はいない。けれど、初めてここに来たときよりも怖さは感じなかった。
真司の心は少しだけ軽い。だからなのか、鳥居の中へと向かう足取りは軽く、自然と笑みが浮かんでいた。