薄紅の桜の花びらが、祇園の町の空に舞う。
 
 舞妓のかんざしに少年は恋をし、

 少女は神社にそっと胸の内を願う。


 都の栄華に憧れる者たちの夢を聞き届けるために、

 双子の神さまが人の世に降り立った。

 兄は寡黙に人々の糧を作り、弟は言葉で人々の心を励ます。

 おばんざいの『なるかみや』は双子の神さまのお店。

 一日一組限定、献立はあなたの心を見て決めます。

 あなただけのための料理をお作りします。

 お代は神さまの御心のままに。


 ――これは、京料理人を目指していた私が、

 神さまのおばんざい屋さんで邂逅した嘘のような本当の話。

 きらきら輝く宝石のような大切な思い出を胸に、

 私は今日もおばんざいを作る。


 あなただけのための料理を、私だけの作り方で――。