その後、光子は鬼族の産婆にも診てもらい、やはり妊娠していたという嬉しい報告を相談所に知らせてくれた。

 三百年子宝を授からなかったふたりにとって、諦めていたところでの妊娠は、願ってもない奇跡のような出来事だったようだ。

 光子はあれ以来、ご主人のデベソのことは言わなくなって、雷が落ちるような大きな喧嘩もないらしい。

 そして今度は、吾郎をいい父親に仕立ててほしいという、光子さんからの相談を受けて、吾郎は個別で粟根のところに通うようになった。

 粟根は、「ここは父親養成所ではないのですが」と言いながらも引き受けているが、粟根自身も子供の世話などはしたことがないようで、オムツ交換の練習を吾郎と一緒に四苦八苦しながらやっている。

 吾郎は心療室にやってきては、いつも楽しそうに光子とお腹の子の様子を話してくれる。それを聞くと、リナはとても幸せな気分になるのだった。