菓子先輩のおいしいレシピ

「実は昔、料理部の人数が多かったときは、月一でお茶会をしていたのよ。部費にも余裕があったしね。そのときに揃えたものなの。また使うことになるなんてねぇ……」

「へえ、優雅ですね」

 きっと浅木先生が顧問だったころなのだろう。みくりちゃんはあの先生を知らないから、のほほんとしたコメントをしているが、浅木先生を囲んだ月イチのお茶会なんて、王子を取り合う貴婦人たちのぎらぎらした抗争しか思いつかない。怖すぎる。もしくはアリスたちに囲まれた帽子屋?

 そこまで妄想したところで、ピーンと思いつく。

「あ、あの。予算とか準備的に大丈夫か分からないんですけど、ちょっと思いついたことがあって」

「なあに? なんでも言ってみて」

「アフタヌーンティーって、ちょっと敷居が高い感じだと思うんです。それをなくすためにテーマを決めて、服装とか装飾とかに凝ってみたらどうかなって。例えば、不思議の国のアリスとか」

 言ったはいいけれど、的外れのアイディアではないか、菓子先輩たちを呆れさせてしまうのではないかと緊張した。だけど、私の言葉を聞いた菓子先輩は顔をぱあっと輝かせて、

「アリス! 素敵だわ。帽子屋のお茶会のシーンも有名だものね。それなら真面目なお茶会というより、アトラクションみたいな感じで楽しんでもらえるかも」

 と喜んでくれた。

「ま、まさか服装もアリスの仮装をするとか?」

 柚木さんは少し引き気味のようだ。