「あのね」


私は唯人の手を握る手に力を込め、言葉を一語一語、押し出すようにして言った。


「さっきも言った通り、私、未来から来たの。修学旅行の当日に高熱を出しちゃって、私だけ行けなくて助かっちゃうんだけど、みんなが乗ってたマイクロバスが高速道路で大事故に巻きまれて、全員死んじゃうの」

「死んじゃうの? 俺たち」

「うぅ……」


喉が詰まったようになった。私は胸を大きく膨らませて息を吸った。


「十二年後にこの旧校舎が取り壊されることになって、松下先生から最後に校舎を見に来ないかって連絡があったんだ。それでこの3年1組に来たんだけど、教室の中に入った途端、時間が急に巻き戻って」

「時間が巻き戻った、かぁ……」

「初めてタイムリープが起こったのは、昨日なんだ。昨日も同じように、この教室に入った瞬間、時間が十二年前に巻き戻ったの。そのときは日付が10月16日だった。だけど今日来たら17日になってて……」