家に着いたときには、わずかに日が傾き始めていた。
私は汗でベトベトになった身体をシャワーで流した。流しながら、湯気で白くなった鏡に手を伸ばして曇りを拭った。
「うわぁ……ひどい……」
何時間も泣き続けていたせいで、いつもは奥二重のまぶたが、腫れぼったい一重になっていた。
お風呂から出たあと、洗面台にこもって冷たい水で顔を洗ったり、保冷剤で目を冷やしたりしてみたけど、なかなか腫れは引いてくれなかった。
どうしよう。これじゃ泣いたのがバレバレだ。
そろそろお母さんが仕事から帰ってくる。
私はタオルに包んだ保冷剤を持って自分の部屋に戻り、ベッドに横になった。
ちょうどそのとき、
「ただいまー」
タイミングを見計らっていたように、玄関からお母さんの声が聞こえた。ビニール袋がこすれる音とともに、足音が階段を上ってくる。