ドレッサーの前に指輪のケースを置いて、ふたを開けた。


唯人とペアルックの指輪。長い間、押入れの奥に仕舞いっぱなしにしていたから、わずかに変色している。


指輪をケースからそっと取り出し、自分の右手の薬指に通してみた。


もらった当時は……昨日唯人にはめてもらったときには、サイズがぴったりだったのが、少し緩くなっていた。


あの頃と比べて身長はほとんど変わっていないのに、体重が十キロ以上減ってしまったから、仕方ないのかもしれない。


指輪を外そうとして、手が止まった。


このままでいたい、と思った。


唯人がもうこの世にいないという現実は、きちんと受け入れている。いつまでも過去の恋人に執着するべきじゃないこともわかっている。


だけどこの先どうなるにせよ、




とにかく今は。


今だけは。




まだ、唯人の彼女でいたい。