「俺、こんな風に人前で泣いたの、すごく久しぶりでした。凛々子さんの前だと、どうも気が緩んでしまうみたいです」
「私もです。信広さんとは昨日初めて会ったばっかりなのに、なんだかずっと前から知っている相手のような居心地の良さがあります」
「ですね」
私と信広さんは赤く腫れた目でお互いをまじまじと見つめ合い、ふっ、と微笑み合った。窓の外では、相変わらず声高に蝉が鳴いていた。
夏祭りの写真をぼんやり眺めていたら、いつのまにか一階から物音がしていた。
私もリビングに行こうかな。
スマホを切ったとき、自分の顔が黒い画面に反射して映った。
どうしよう。まだ目の腫れが引いてない……
なんとなく両親と顔を合わせづらかった。
私はふたたびブランケットにくるまり、ふたりが家を出ていくまで、ベッドの中でじっとしていた。