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「——……大丈夫ですか?」


低く澄んだ声が、鼓膜を震わせた。


顔を上げると、信広さんが傾いた私の身体を支えるようにして立っていた。


「んっ……」


ぼんやりする頭を押さえながら、私はゆっくりと身体を起こした。


教室の中にみんなの姿はない。みんなからもらったプレゼントも、薬指の指輪も、すべて消えている。


「凛々子さん?」

「あっ、えっと、すみません。ちょっとめまいがして」

「めまい? 大丈夫ですか?」


信広さんの隣で、先生も心配そうに眉を寄せて私を見ている。


「えぇ、大丈夫です。たぶん暑さのせいでクラッとしただけなので、お水を飲めばすぐに良くなります」


私は鞄の中から水筒を取り出し、冷えた麦茶を喉に流し込んだ。本当に身体が水分を欲していたようで、あっという間に水筒の中身が空になった。