ふと、リビングのカレンダーが目に入った。
7月29日 月曜日。
先週の今日、ちょうどこれくらいの時間に、松下先生から電話がかかってきたんだ。
『——実はね、旧校舎の取り壊しが来週の水曜日から始まることになったのよ』
受話器越しの先生の声が、耳の奥で蘇る。
来週の水曜日からだった旧校舎の取り壊しが、早くも今週の水曜日に迫っている。そしてタイムリープ先の日付もまた、刻々と修学旅行の日に近づいている。
みんなが、死んでしまう。
……いや。
死んでしまうのではなく、
もう、死んでいるんだ。
私はその“現実”を受け入れなくちゃいけない。
窓を閉め、二階の自室に戻った。髪をドライヤーでブローし、爽やかなパステルブルーの膝丈ワンピースに着替え、鏡に向かって化粧をした。
そうやっておしゃれをしていると、気持ちが少し前を向くような気がした。
支度を終えて玄関を出ると、明るい夏の陽光が辺り一面に照りつけていた。
私はそのまぶしさに目を細めながら自転車のスタンドを蹴り上げ、サドルにまたがった。