「中学のとき、一年間だけ東京に住んでたことがあるんですけど、あそこは梢田町と比べ物にならないくらい人が多いから大変ですよね」

「特に朝の満員電車は地獄でした。大学は電車で通っていたんですけど、学校を卒業して今の会社に就職が決まったとき、すぐに会社まで徒歩で通える場所に引っ越しましたもん」

「週に五日も行くところですから、やっぱり通勤は楽な方がいいですよね。満員電車で一時間だなんて、職場に着く頃にはすでにヘトヘトになってそう」

「本当ですよね。考えただけで疲れちゃいます」


私と信広さんは、くすくすと声を立てずに笑った。波長が合うのか、驚くほど話が弾む。




「ねぇ」


私たちの会話を聞いていた先生が、ぱん、と手を鳴らした。